「食べること」から考える、私たちの未来 vol.1

 

食のあり方を考え直す、「肉を食べること」の視点から

 

みなさんは普段どのような食生活を送っていますか?

食に対してこだわりがある人も、それほどこだわりがない人もいると思います。

でも、食欲が人間の三大欲求にもあるように、「食べること」というのは私たちが生きていく上で欠かせないことですし、日々選択に迫られることだと思います。

その毎日の小さな選択は、一見とてもパーソナルな事柄だと思われがちですが、実は何を選ぶのかによって、社会的に大きな影響を与える可能性のある事柄です。

今回から「食べる」という行為にフォーカスを当てて、私たちの日々の選択がどのような影響力を持ちうるのかについて考えていこうと思います。

今回は第一弾として、「肉を食べる」ということにフォーカスを当てたいと思います。

今、食の多様化はどんどん進んでいて、自分がどのような選択をしたらいいのか悩む人も多いと思います。

そんな人に食のあり方について考えるきっかけを持ってもらえたら嬉しいです。

 

 

普段は見えない、「肉を食べること」が与える影響について少し考えてみる

 

「肉を食べること」はもちろん倫理的な問題もありますが、環境問題にも大きな影響を及ぼしていることが科学的に証明されています。

たとえば、最新の研究によると 、もし肉と乳製品の消費がなければ世界中の農地の75%以上を削減することができ、それでも必要な食料は確保できるとされています。[1]

ちなみに75%以上というのはアメリカ、中国、EU圏、オーストラリアの土地を合わせた広さに等しいそうです。

また、私たちが家畜から得られるカロリーは18%、タンパク質は37%にすぎませんが、その家畜を育てるためには農地全体の83%の広さが必要だそうです。[2]

さらに牛を育てる場合には、牛の呼吸や排泄物からもメタンガスが発生し、これが地球温暖化にも大きく寄与していると言われています。

牛を育てて食肉加工するまで、例えば牛肉1キロを生産するまでにはCO2が16キロ分発生し、これは豚肉の4倍、鶏肉の10倍にも及ぶそうです。

「肉を食べること」は一見環境問題と結びつかないようにも見えますが、一頭の家畜を育て上げるためには十分な食料や水、土地が必要です。

その家畜用の食料を得るためにも水と土地が必要です。

そしてその過程でCO2や有害なガスが発生し、それが地球温暖化を加速させています。

また、「肉を食べる」ということは貧困や飢餓とも密接に繋がっています。

大量の農地が家畜用あるいは放牧地として使われているために、途上国の貧しい人々に十分な土地や水が行き渡らず、価格も上昇していくために、貧困層はより一層こうした資源にアクセスしにくくなっています。[3]

現在、約8億人が飢餓に苦しんでいると言われていますが、その約3倍の栄養価を与えることができるはずの穀物は家畜を育てるために使用されています。[4]

肉だけではなく、食べものというのは、私たちの目の前にやってくるまでの過程が長いゆえに、多くの問題が目に見えない場所でどんどん進んできています。

 

 

 

「正しい選択」なんてきっとない、それでも私たちにできるのは考え続けること

 

このようなデータをみると、「肉を食べる」という行為は「間違った選択」をしているように見えるかもしれませんが、逆に絶対的に「正しい選択」というものはあるのでしょうか。

一方的に口で「間違っている」と指摘することは容易いですが、科学的な情報だけに基づいて「肉を食べること」を全否定することはできないように思います。

もちろん、私たち人間の営みが自然環境にできる限り害にならないようなライフスタイルを送ることは理想的だとは思いますが、「食べること」というのは私たちの日々の生活の中にもっと深く根付いているものです。

例えば、肉を使った料理が、生まれ育った土地のいわゆる「伝統食」として長く受け継がれてきた場合もあると思います。

あるいは、お祝い事として家族と一緒に肉料理を食べた人もいるでしょうし、青春時代にコンビニで売られている肉まんを友達と頬張った人もいるでしょう。

そうした淡く優しい記憶を、「肉を食べることは悪い」という一言で片付けてしまうのはあまりにも暴力的だと思うのです。

ただ、現実問題として環境破壊や貧困・飢餓も進んでいますし、大量生産・大量消費の社会において畜産業が持つ影響力も無視できません。

私たちに今何ができるのかという問いに対して、「唯一絶対の答え」は残念ながらおそらく存在しないでしょう。

しかし、私たちはこの地球に暮らす一員として、絶えず考え続けて「最善と思われる」選択をしていくことはできるはずです。

まずは、あなたが今日食べるものがどこから来て誰の手によって作られたものなのかを考えてみてください。

そして、あなたがそれを食べるという選択をすることによって、どんな影響があるのかに思いを馳せてみてください。

その後にしたあなたの選択が正しいものであるかどうかは誰にも分かりませんが、きっとよく考えた後にする選択は、たとえわずかだとしても以前のあなたの選択とは変わってくるはずです。

 

日常的にできる、ほんのちょっとの工夫

 

最後に、こうした食の問題への一つアプローチとしてベジタリアンやヴィーガンというのも選択肢の一つになると思います。

しかし、現実問題として経済的な理由やそれぞれの嗜好の違いがあると思います。

ただ、実際にヴィーガンというライフスタイルを選択している私としては、「環境にいいから」「社会のために」という理由だけでやっているのではなく、単純にヴィーガン料理は美味しいから続いている面が大きいです。

最近は東京都内でも少しずつヴィーガン料理を提供してくれるお店も増えましたし、インターネット上にも簡単に作れるレシピが沢山溢れるようになりました。

誰もが完全なベジタリアン、ヴィーガンになる必要はもちろんないと思いますが、たとえば週に一日だけ、一食だけやってみるのはどうでしょうか。

食べること自体にワクワクしてしまうような食事の時間はとても幸福なものですし、そういうポジティブな方法で少しずつ社会をいい方向へ変えられたら素敵だと思います。

次回以降の連載では、私のお気に入りの料理やお店をご紹介するつもりです。

この写真は、FLATのローンチパーティでもお世話になったSUNPEDALさんのポップアップカフェでの一コマ
一口食べただけで幸せが溢れるお料理です

参考:

[1] “Huge reduction in meat-eating ‘essential’ to avoid climate breakdown” The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2018/oct/10/huge-reduction-in-meat-eating-essential-to-avoid-climate-breakdown

[2] “Avoiding meat and dairy is ‘single biggest way’ to reduce your impact on Earth” The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2018/may/31/avoiding-meat-and-dairy-is-single-biggest-way-to-reduce-your-impact-on-earth

[3] “The dirt on beef, global hunger & climate change” Planet Forward

https://www.planetforward.org/idea/the-dirt-on-beef-global-hunger-climate-change

[4] Meat Free Monday https://www.meatfreemondays.com/

SUNPEDAL https://www.sun-pedal.com/

Instagram  https://www.instagram.com/sunpedal/?hl=en

投稿者プロフィール

Ryoko
Ryoko
1997年生まれ。津田塾大学在学中。食品産業の裏側を知り、ヴィーガンになる。関心トピックは「食」「環境」など。より多くの人が「生きやすい」と思える社会を目指していきたい。趣味はヴィーガンカフェと古本屋を巡ること。

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