学んで、調理して、味わう「のうげいたまごかけ vol.1」開催されました【京都・南丹】

 

「循環する農村を体験する場をつくりたい」そんな想いとともに開催されたファームツアー「のうげいたまごかけ vol.1」。農家の方々に話を伺い、材料をいただいて、自分たちで調理をする。まさに、Farm to Tableを体験することができる豊かなイベント。今回は、農家さんのお話や当日の様子をレポートします。

 

自然豊かな町、京都・南丹市へ

 

訪れたのは京都府の中央に位置する南丹市。山々に囲まれ、豊かな水や自然にあふれた美しい地域です。そんな場所で “Eat local Live Organic” をコンセプトとしたオーガニック八百屋「369商店」を営むのは、鈴木健太郎さん。今回のイベントの発起人です。

 

 

鈴木さんは、15年前に都市部から農村へ移住された1人。現在は、京都市内外をトラックで駆けめぐり暮らしや手仕事から生まれていく野菜や米、加工品や調味料を届け「つながる食卓」を広げる取り組みをしています。

 

南丹市には、昔から農業をされている方もいれば、移住を経て、新規就農をされる方も多いそう。近年は有機栽培や特別栽培など、環境負荷の少ない農業を志す人も増えてきていると鈴木さんはいいます。

 

循環を学ぶ場づくりを。「のうげいたまごかけ」とは?

 

今回、初の試みとして開催された「のうげいたまごかけ vol.1」。名前のとおり、卵かけご飯がメインとなる企画ですが、ただ卵かけご飯をつくるだけのイベントではありません。

 

作り手さんに会いに行き、話をきいて、現場を見学する。そして、食材を受け取り、みんなで調理していただくという、Farm to Table を体現できるファームツアーです。

 

ごはんをよそって、卵をわって、醤油をかける。

 

日常で卵かけご飯をつくると、数分で完成してしまうかもしれません。しかし、その数分の裏側をたどってみると、作り手さんたちの想いと努力、自然の生命力が詰まっていました。

 

 

お米をいただいて

養鶏家さんから卵をいただき、

大豆と小麦の手作り醤油をいただくーー

 

畑に足を運び、作り手さんの想いを聞いてからいただく卵かけご飯ごはんは、特別な一杯となりました。

 

いざ、スタート

 

当日は、15名の参加者が集い、鈴木さんのお話とオリエンテーションからはじまりました。親子での参加やお子さん連れの家族、お一人で参加される方も。農業や田舎暮らし、食育に関心のある参加者が集まりました。

 

オリエンテーション後、まず向かったのは八木町丹波ハピー農園さん。この土地で30年ほど自然栽培米を育てているという堀さんに話を伺いました。

 

 

「稲は稲の能力で育っていく。農薬をつかって、自然の成長を妨げないようにしたい」

 

父親の影響もあり、子どもの頃から農薬に対して疑問を持っていたという堀さん。その眼差しには、温かさと強い信念がありました。

 

 

堀さんは、農道具の整備や修理をしたり、倉庫を手作りするなど、作物づくりだけにとどまらない暮らしをされています。「暮らしに関することは、なんでも自分でできるというのが百姓だと思っている」という言葉が印象的でした。

 

百姓という言葉は、百(ひゃく)の姓(かばね)と書きます。「姓」という漢字の由来をたどると家柄や職業、地位を表すそう。昔は地域内で農業や大工、問屋などそれぞれの知識や技量を共有することでコミュニティを支えあっていました。そのように考えると、百の職業を自らが担うという意味に捉えられるのかもしれません。

 

 

堀さんの想い、百姓という言葉の意味を知り、暮らしのあり方を見直すきっかけになりました。艶やかなお米をいただき、次の目的地へ出発しました。

 

堆肥も、えさも。畑のサイクルを大切に

 

次に訪れたのは、南丹市園部町にある湯浅農園さん。長い間、養鶏を営んでいるという湯浅さんのもとを訪ね、お話を伺いました。平飼い鶏舎にはストレスなく、のびのびと駆け回る鶏たちの姿がありました。

 

 

「お客さまに安心して卵を食べてもらいたい」

 

そう話すのは、4代目として農園に立ちつづける湯浅拓さん。養鶏をしながら、野菜を育てたり堆肥を活用したりと、畑の循環づくりに取り組んでいます。

 

中でも特にこだわりがあるという、鶏たちが食べる餌。畑で育てた作物をはじめ、米ぬか油粕、栄養のための少量の魚粉を自ら直配合しているといいます。養鶏は、食べたものが卵の色素に反映するそう。湯浅さんの平飼い卵は黄身が白っぽいクリーム色のような色でした。

 

 

鶏舎の足元に敷かれたすり糠は、野菜栽培の肥料として畑に使用しているなど、敷地内だけでも自然の循環を大いに活かしています。鶏舎の横には卵の直売所もあり、お客さまが安心して好きなタイミングで購入できるように、卵がずらりと並んでいました。

 

農と暮らし、季節しごとを楽しむ

 

最後に訪れたのは、園部町にあるココペリハウスさん。広々とした畑で作物を育てながら「農と暮らし」を体験できるワークショップやイベントの開催をされています。お米や野菜、小豆、大豆、小麦などの作物を育てながら、パンやお菓子の加工なども製造しています。

 

今回いただくのは、卵かけご飯用のお醤油。ココペリハウスで暮らすようこさん、あゆみさんにお話を伺いました。

 

 

お醤油を作りはじめたきっかけは、大豆や小麦が収穫できたからだといいます。では「なぜ大豆を?」という問いには「味噌を作りたかったから」というのでびっくり。

 

自らの手で、季節に合わせた自給自足の暮らしを楽しまれている様子を伺い、自然と暮らしのつながり、循環することの本質を学びました。

 

 

敷地内には、ココペリハウスの看板ヤギ・こめこちゃんの姿も。参加したお子さんたちから大好物の草をもらって、喜んでいました。

 

食材を調達し、調理のはじまり

 

ファームツアーを終えて、会場となる新庄郷育館に到着。いよいよ、昼食づくりが始まりました。

 

参加されていたお子さんたちも、お腹がペコペコな様子。役割分担をしながら調理をし、おいしそうな小料理がテーブルに並んでいきました。

 

 

369商店さんのお野菜、ハピー農園さんのお米、湯浅農園さんの平飼い卵、ココペリハウスさんのお醤油。なんとも贅沢なお昼ごはんができました。

 

 

白ごはんは、火おこしから始まり、かまどでふっくら炊きあがりました。卵をポトンと落とし、熟成された醤油をひと回し。ファームツアーで目にした風景、農家さんの想いが、1つのお料理として形となった瞬間でした。

 

 

卵かけご飯という、身近な料理を紐解いていくと、今まで見えてこなかった背景が映しだされていきました。

 

ご飯をよそって、卵をおとし、醤油をかける。

 

たった数秒で完成する一品をたどっていくと、自然の力強さや農の在り方、人々の努力が見えてきました。

 

 

みて、聴いて、学んで、調理するーー

 

身体をつかって体験し、五感をつかって味わう。そんなファームツアーが京都・南丹市にありました。今後もイベントを開催していくそうなので、是非チェックしてみてくださいね!

 

 

撮影: まつたび(@matsutabi

 

369商店

HP: https://369vegeful.com/

Instagram: https://www.instagram.com/369vegeful/

 

投稿者プロフィール

Reina Matsuda
Reina MatsudaFLAT. 編集長・ライター
2000年生まれ。高校時代にH.O.P.E.の一員として活動し始めたことをきっかけに、エシカル消費をライフスタイルに取り入れる形で発信している。WEBメディア「FLAT.」の編集長、一般社団法人TSUNAGUのメンバー。また "身体にも環境にも優しいおやつ"を通して、プラントベースの楽しさや環境への配慮を伝えている。

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