「ふらっと」のぞいてく? "エシカル" "サステナブル" をもっと身近に、もっとおしゃれに。

「マテリアル」から考える、サステナブルファッションとは

(セッションのファシリテーションを務める山口さん)

 

最近よく雑誌や広告で目にするようになった「サステナブルファッション」。環境に優しく、労働環境にも配慮したファッションのあり方を模索するブランドの動きも出てきています。そんな中、先日開催された「サステナブル・ブランド国際会議」では「見えるマテリアル、見えないマテリアルから考えるファッションのサステナビリティ」をテーマとしたセッションが行われました。サステナブルファッションと聞くと、生産過程の透明化などといったサプライチェーンに関して注目されることが多いですが、今回は「マテリアル」から見えてくるファッションのサステナビリティを考えます。

 

 

マテリアルを変えると、世界が変わる

 

衣料品と履物の製造は、全世界の温室効果ガス排出量の8%を占めているファッション産業(*1)2015年から2030年において、ファッション産業の廃棄は約60%増加すると言われ、年間570万トンもの廃棄が新たに生まれている一方で、世界ではリユースまたはリサイクルされる衣類は20%程度という現状が(*2)

 

様々な社会課題を抱えるファッション業界がサステナビリティへと舵を切ることで生まれるポジティブなインパクトはとても大きいはず。具体的に、その一つのアプローチとして「マテリアル(素材)」から考えることもできます。

セッションの冒頭は、マテリアルコネクション東京 (運営会社:株式会社エムクロッシング) 代表取締役の吉川 久美子さんより、「マテリアル」に関する取り組みについてお話しがありました。

 

 

吉川さん:マテリアルコネクション東京では、「Every Idea Has a Material Solution」をミッションに、マテリアルライブラリーの運営や素材提案コンサルティング、素材の用途開拓を中心に展開しています。企業ブランド、デザイナーの皆さんは素材からインスピレーションを受けて、アイディアを形作るため、私たちは商品開発のハブとして、素材メーカーやデザイナー、企業にマテリアルを紹介し、ものづくりを活性化させる取り組みをしています。

 

また、もともとマテリアルコネクションはニューヨークでスタートしており、グローバルで7拠点あるため、運営しているマテリアルライブラリーに関して、会員制で国内外の常設ライブラリーに訪問できたり、素材のメーカーにもコンタクトできるようになっています。実際に素材について知っていただけるような展示会やイベント、セミナーも開催しています。

 

マテリアルライブラリーの様子

 

そういったマテリアルは、「サステナビリティ」自体へのアプローチを変えていけると感じています。例えば、PUMAとの取り組みでは、買った時はショッピングバッグ、その後はシューズバックになるようなデザインがされていますし、発泡剤の端材を圧縮し、新しい素材としてテーブルにする取り組みもあります。

 

素材を「どう選択するか」に加えて、「一つの製品の寿命を終えた後、次のライフサイクルにどうつなげていくか」という視点も大切だと感じます。リサイクルは最後の手段であって、その前にできるリユースやリペアといった選択もありますが、そうなると耐久性も重要になり、製品の寿命ごとに課題も変わってきます。使い捨て用途の物に関しては、他の素材に替えてリサイクルできるようにしたり、そもそもマイボトルやマイバックを持参するようにしたり、と工夫できるところはありますよね。加えて、海外では廃棄した際に堆肥できるリジェネラティブな(再生型の)素材が盛んです。

 

また、寿命が長くなるものは「回収する」ビジネスモデルも展開されています。寿命が長くなるというのは、耐久性も重要になると同時に耐久性の強化のために素材が複合化させていくということでもあるので、リサイクルしにくくなるのも事実です。そういった点も考慮しながら、単一素材でも強度が強い素材の開発も大切ですね。

 

 

ユーザー参加型のサステナブルファッション

 

次に、サーキュラーエコノミー型のファッションビジネスを追求されている、株式会社 FABRIC TOKYO 社長室 クリエイティブ統括 峯村 昇吾さんから、ファッション業界におけるビジネスモデルを中心としたお話がありました。

 

峯村さん:「FABRIC TOKYO」では、「Fit Your Life」をブランドコンセプトにオーダメイドのビジネスウェアを中心に事業展開しています。サービスにして5年くらいで、メルカリの創業メンバーも参画しており、テクノロジー使って、ファッション業界を変えたいと考えています。テックがアパレルに進出しているイメージですね。

 

 

峯村さん:サイズやデータ、やライフスタイルのデータから、カスタマーと一対一でコミュニケーションすることを大切にしています。サイズが合うのは当たり前で、その人の価値観やライフスタイルにフィットすることが一番大切です。「既製服」ではなく、カスタマーが自分たちで洋服を作れるサービスを目指しています。

 

同時に、「サーキュラーエコノミー」にも注力しており、企業が在庫を持たなくて良いビジネスモデルを設計しています。具体的に、D2Cで直接ユーザーとつながれるような仕組みにしたり、OMOと呼ばれるオンラインとオフラインを垂直統合させて、ユーザー体験を提供しています。

 

このようなビジネスモデルを構築することで、経済活動自体を刷新したいと考えています。「購入」はサステナブルファッションの「ゴール」ではなく、「スタート」。修理やクリーニングなど、実際に顧客の「利用」に沿った形で解決策を考える必要があると思います。そういう思いで「FABRIC TOKYO 100(ハンドレッド)」というリペアの月額制サブスクリプションサービスも展開しています。

 

グローバルブランドだから出来る、サステナビリティ

 

エイチ・アンド・エム へネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社 CSR/サステイナビリティ・コーディネーター の 山浦 誉史さんからは、グローバルブランドだからこそできるサステナビリティについてのお話が展開されました。

 

山浦さん:H&Mでは、もともとビジネスコンセプトの中にファッションとサステナビリティについての明記されており、「グローバルブランド」として小売りに対する影響力を理解した上で、サステナビリティを展開しています。例えば、2020年までに使用するコットンをリサイクル、もしくはサステイナブルに調達されたものに、2030年までに使用する素材をすべてリサイクル、もしくはサステイナブルに調達されたものに、そして2040年までにバリューチェーンを通じてクライメット・ポジティブになる目標を打ち出しています。

 

どういった素材を選びデザインをし、どのような売り方をするか、など、循環型のバリューチェーンを重視しています。例えば、グローバル規模で古着回収サービスを行ったり、「コンシャス・コレクション」という使用素材の50%以上がリサイクル、もしくはサステイナブルに調達されたものを中心としたサステナブルなコレクションを展開しています。

 

2019年には、ペットボトルをリサイクルした素材を使用したコレクションも展開。

 

他にも、「Global Change Award」というイノベーションアワードを毎年行い、循環型ファッションが産業レベルまでスケールアップできる研修プログラムを提供し、実際にオレンジの皮からセルロース抽出して商品化したりしています。

 

そういった一次流通だけでなく、今後は本格的に二次流通市場へ参入していきます。一部の国ではレンタルサービスやリペア、リメイクも。購入後のケア商品といったガイダンスサービスも展開しています。

 

 

サステナブルファッションを盛り上げるために

 

山口さん:見えるマテリアルと、見えないマテリアルのサステナビリティについて、それぞれの取り組みを詳しく教えていただけますか?

 

山浦さん:私たちが使用する商材も、57%サステナブルなものに切り替え、什器やインテリアなどの非商材も含めて2030年までに100%切り替えたいと考えています。他にも、包装パッケージ自体を紙製や堆肥化可能なデザインにして有料化したり、販売方法も含めてサステナビリティを考えるのが大切ですよね。

 

ただ「紙」に変えれば良いわけではないですし、もともとショッピングバッグ自体がライフサイクルが短いので、ゴミとして捨てられたとしても環境に負荷が少ないようにデザインしたり、そもそもエコバッグを持参してもらえるような仕組み作りも重要です。

 

峯村さん:服の形を整えるために使用されているキーパーなど見えない部分のマテリアルがたくさんあるので、そういった部分をどうサステナブルにするか考えています。素材の切り替えもしていて、リサイクルポリエステルを使用した取り組みをしていますね。

 

また、ブラックフライデーならぬ「ホワイトフライデー」という、商品化されずに眠っている高品質の生地からオーダースーツを作る取り組みも行いました。以前繊維商社でテキスタイル部門で働いていた時、9割は長期在庫として残り結果的に捨てられる現状を目の当たりにした経験があり、ちゃんと評価されるものは評価されて欲しい、価値に向き合って欲しい、という想いが根底にあります。

 

吉川さん:最近ライブラリーに植物由来樹脂の素材が新しく入ったのですが、素材や商品のライフサイクルについてよく分からない消費者に向けてそういった素材を提供するのも大事ですが、どうリサイクルするかなどの情報を知ってもらうことも大事だと考えています。工場で出た廃材を上手く再利用するのも一つのソリューションですよね。



山口さん:ファッションの「サーキュラーエコノミー」について、それぞれどのようなアプローチがあると考えていますか?

 

山浦さん:あらゆる段階でサーキュラーエコノミーを実践する中で、サプライチェーンを完全にサーキュラーにすることは難しいものの、包括的にアプローチすることが大事だと考えています。ビジネスモデルが社会に与える影響は大きいですし、今までの直線的なビジネスモデルを循環型にすることで解決できる課題もあるので、そういったモデルを用いながら取り組んでいます。

 

また、リサイクルの技術ももっと開発していくべきだと考えています。技術的な問題や、純正のものに匹敵するか、コスト面はどうなのか?といった回収における課題も大きいです。ファッション自体、消費者の手元で終わる製品なので、企業が購入後のプロセス全てを見ていくのは難しいとも感じています。

 

峯村さん:サーキュラーエコノミー自体難しいですよね。リユースしやすい一次流通を考えると、関わる全てのセクターの人たちと作っていくか、がとてもポイントだと思います。巻き込まれる側に伴走して解決策を講じられるように、経済的合理性も考えながら実践していきたいです。

 

吉川さん:ファブリックがリサイクルされにくいという課題がありますよね。一方で、物理的に解く際にナイロンとウールがすぐ解れ、リサイクルしやすくなる素材もあります。マテリアルのイノベーションも日々行われていますし、ファッションに対する消費者の関心度が高まっている分、そういったイノベーションも取り組みやすくなるのではないでしょうか。

 

山口さん:サーキュラーファッションを考える中で、「廃棄物や汚染を出さないデザイン設計」、「地上の資源を使い続けること」、そして「リジェネレーション(環境再生型)」の3つが大切だと感じています。そういった点を踏まえて、今後のファッション産業はどうなると考えていますか?

 

山浦さん:変化を導くことがビジョンにあるので、サステナビリティに関して先導的に実践していきたいと考えています。こういったサステナブルな取り組みをしてもしっかりとビジネスになる、ということを業界で発信することで、他のブランドも導入しやすくなると考えていますし、グローバル・ローカルの面で刺激になれる取り組みにできれば、と思いますね。

 

峯村さん:サーキュラーエコノミーだけでなく、私たちは「スマートファクトリー」も打ち出しています。例えば、最適な人員配置。働き方改革、と言った目線もありますが、現状を可視化して、実際にどうやったらどのような結果が出るのか?を考えていますね。

 

山口さん:今回皆さんのそれぞれの取り組みをお話いただきましたが、「労働」の視点を持つことも重要だと感じました。「サステナビリティ」と聞くと「環境問題」のイメージが強いですが、それだけでなく「労働問題」もありますよね。モノという外的なサステナビリティだけではなく、人の心に目を向けた内的サステナビリティの両輪を大事にしながら環境と労働を切り離さず考えることが大事だと思います。ファッション自体、多くの人への届けられる波及力があるので、上手く利用しながら社会課題に取り組んでいきたいですね。

 

山浦さん:サステナビリティは「大きな企業ができること」ではなく、これから長くビジネスをやるための「マインドセット」の問題だと思っています。

 

峯村さん:ビジネスのアイデンティにそういったサステナビリティが大切になる中で、ユーザーがどう素晴らしい体験をしてもらえるか、が鍵ですよね。

 

吉川さん:デザインすることの責任に、サステナビリティが入ってくると、単に企業との競争ではなく、いかに顧客の体験を醸成できるビジネスモデルか?が肝心になりますよね。商品のデザインだけでなく、どういう仕組みでサーキュラーを実現するのか、を考えるのが大事だと思いました。

 

<参考文献>

(*1)国際連合広報センター「国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始

(*2)Global Fashion Agenda & The Boston Consulting Group「PULSE OF THE FASHION INDUSTRY」(2017)

 

MARI KOZAWA by
一般社団法人TSUNAGU理事。ウェブメディア「FLAT. 」ディレクター。2018年エシカルファッションブランドTSUNAGUにジョイン。ビジネスモデル設計や生産者と消費者のコミュニケーションづくりを通して、ファッションの透明性を発信。その他、企業や団体とともにプロジェクトを企画・運営。

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