Design Stalking 01. 素材とデザイン_アルミ缶からできた、ストリート生まれの素敵なファニチャー

こんにちは。萌です。

 

ストーリーのあるものづくりやデザインに興味があり、この連載を通して、「いいな!」と思ったアート作品やデザインをみなさんと共有できたらなと思っています。

 

一番初めのテーマは「素材とデザイン」。

 

みなさんは、ゴミだと思っていた素材が、“プロセス”や“背景にある物語”を知ることで、その見方がガラリと変わったり、とても貴重なものに感じたりすることってありませんか?

 

そこになんの価値もなさそうに当たりまえのように散らばっている素材に、アーティストの手が加わることで、そのものの価値や見え方が変わっていくことってあると思うんです。

 

素材や地域文化のリサーチから作品を生み出すデザインスタジオ『Studio Swine』

 

Studio Swine(スタジオスワイン)」は、日本人建築家の村上あずささんと、イギリス人アーティストのアレキサンダー・グローブスさんの二人で2010年に設立したデザインスタジオ。地域の独自性や素材への徹底的なリサーチから、デザインの領域を越えたコンセプチャルな作品を作り出しています。

 

(出典:Studio Swine)

 

私がこの二人のことを知ったのは、イギリスの大学院に入学したばかりのころ。アレキサンダーが授業のゲスト講師として話しに来たことがきっかけでした。

 

オブジェや家具、インスタレーションといった立体作品をつくることが多い彼ら。ときにその土地に長期で滞在し、文化、工芸、資源、歴史についての細やかなリサーチから作品づくりをはじめます。そして、ただ作品をつくるだけでなく、その作品を生み出す仕組みや機械まで自分たちで作ってしまうのです。

 

ロンドンの美術大学院を卒業してわずか数年のデザイナーが、世界を飛び回り、作品を作りあげるそのストイックさとパワーに、今まで見たことのない作品の数々に、とても感動したのを覚えています。

 

地域の文化や、素材、歴史、問題についてのリサーチから始まるStudio Swineの作品は、社会問題となっているその土地特有の廃棄物や、ある一定の価値しか見出されていない素材に手を加えることで、その素材の見え方が変わる作品を多く生み出しています。

 

今回はそんな彼らの作品の中の一つをご紹介します。

 

ブラジル、サンパウロで空き缶から椅子をつくる移動型炉プロジェクトCan City

廃品回収で集められたアルミを移動型の炉で溶かし、街で見つけた植物や廃材で型を取った砂型に流し込んで作られた椅子たち。(出典:Studio Swine)

 

ブラジル、サンパウロに9ヶ月間滞在して完成させた作品「Can City」は、オブジェのようなアルミ製の椅子のコレクション。大量に捨てられている空き缶などの資源ゴミを拾って生計を立てている、カタドール(回収屋)という職業の人たちに注目したことから生まれました。

(出典:Studio Swine)

(出典:Studio Swine)

 

屋台から出る廃油を燃料にした移動型炉で、拾ったアルミ缶を溶かします。近くの砂浜から集めて来た砂に、街に落ちている木材や葉、ブロックを押して型取りした砂型に、このアルミを流し込んで作られる椅子。材料は街にあるものでできるので、お金をかけずに家具をつくることができるのです。

 

ただアルミ缶を拾って売るのではなく、その材料をもとに手を加え家具にすることで、カタドールたちの収入を増やすことができるという仕組みです。

 

この作品の特徴は、デザイナー本人たちがアルミ缶を使って椅子を作って終わりではなく、カタドールの人たちのための道具を考え、それを使って自分で家具を作って売ってもらうところまでを想定してデザインしているところです。

サンパウロの街の廃棄場から資源ゴミを集めて売ることで生計を立てているカタドール(出典:Studio Swine)

 

集められた空き缶。これを溶かしてアルミ製の家具に変える。(出典:Studio Swine)

 

立派な工場も、材料を購入することも必要ない。サンパウロのストリートにある素材で、ストリートの場所を使って、立派な家具が作れるのです。

葉っぱの葉脈やブロックの跡が入ったデザイン、サンパウロの街の質感を感じるアルミ製の家具からは、その背景にあるカタドールたちのストーリーを感じとることができます。

 

デザインでものの価値の見方は変わる

制作と同時に撮影されたショートフィルム。(youtubeより)

 

二人はリサーチの行程や作品が作られる様子を、美しいドキュメンタリー映画のような映像にして、作品と一緒に発表しています。サンパウロの街に流れる空気感と椅子が生まれるまでの旅路が綺麗な映像で表現されていて、観客は椅子に込められた物語を感じとることができます。

 

廃材のアルミという数円にも満たないような価値だった素材。そこに、Studio Swineのつくった仕組みが入ることによって、「サンパウロの街のアルミ」でできた「サンパウロでカタドールにしか作れない椅子」としての特別な価値が見出されたのです。

 

私たちが価値のないものと思い込んで見逃しているものって、実は身の回りにたくさんあります。その素材が持っている物語を、デザインで新たに表現し直す。そうすることで、ゼロから作り出さなくても、こんなに格好良くて、特別なものへと生まれ変わり、みんなが欲しい!素敵!と思うようになるのです。

 

同じものでも見方が変われば、価値の感じ方も変わるのだから、きっと私たちの周りに散らばっている素材たちには、無限大の可能性があると思いませんか?

 

ものに溢れた今の社会で、どこで、何を使って、どんなものをつくるか。そんなことを考えて自分たちの暮らしている世界を見回してみたら、新しいアイデアがふと浮かんでくるかもしれません。

 

Studio Swine 公式サイト:https://www.studioswine.com/

 

投稿者プロフィール

Moe
Moe
1991年 東京都生まれ。2014年武蔵野美術大学を卒業後、渡英。University of Arts London, Camberwell College of Artsの大学院へ。ストーリーが感じられるデザインやアートが好き。

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