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究極の手仕事で作り上げられるテキスタイルとは

カンボジアに人工的な物を一切使わずに、全て手作業で美しい織物を制作している村があります。

 

アンコールワットで有名なシェムリアップの中心地から北へ約30km。トゥクトゥクに揺られること約1時間半。牛の群れの横断を待ち、陥没した道を進み内臓が口から飛び出すのではと思われるほどの衝撃にまいっていた頃、ようやく到着しました。

その名もチョップサンウン村。

森林伐採されて荒れ果てた土地を開墾して村を作ったのが、日本人だと知ったら皆さん驚かれるでしょうか?

 

 

カンボジアでは1970年から20年以上続いた内戦により、アンコール王朝時代から脈々と受け継がれていた伝統文化はことごとく失われかけていました。

元友禅職人であった森本喜久男さんは、カンボジアの伝統の絹織物に出会いその美しさに魅せられ、IKTT(クメール伝統織物研究所 http://www.iktt.org/)を設立、復興に生涯を捧げました。

森本さんが収集した約50〜100年前のカンボジアの絣織物

 

2002年、森本さんはシェムリアップ近郊にある5ヘクタールの荒れ地を購入。

野山を開墾し、人力で小屋を建て、井戸を掘り、畑を耕しました。

そう、彼は単に伝統織物の復活を目指したのではなく、伝統織物の担い手となる人々が幸せに暮らせる持続可能な村“伝統の森”の創造を志向したのでした。

 

“森”に地下水は有りますが、ガスは無く、電気は夜間のみジェネレーターで発電します。

野菜を育て、肥料を得るために牛を育て、鶏を飼っています。文字通り、全てが自給自足。

 

 

 

 

村には小学校もあり、子供たちは高校まで就学しているそうです。

学校に通うまで、働くお母さんの傍らにいます。

 

 

 

 

 

生前、森本さんは彼女たちの幸せを一番に考えられていたそうです。

現在、村には約60名のスタッフとその家族が仲良く暮らしています。 

村では染織に関わるほぼ全ての材料、道具などが村人の手によって生み出されています。

桑の木を植え蚕を育てシルクを紡ぎ、育てた綿花から綿糸も紡ぐ。手で紡ぎますから、機械のように一定の太さにはなりません。

長い時間をかけて一本一本紡がれた糸には手のぬくもりが残ります。

染料もここで育てた植物を使います。

 

果物のライチの木はグレーに染まります

 

かつてカンボジア各地で行われていた藍染を復興させるため、現在、日本の方々の協力のもと取り組んでいるそうです。

 

 

ここで行われている絣染めという技法は染めない部分を一つ一つ括(くく)って染め、ほどいては次の染色で染めない部分を括って染めるという作業を繰り返します。

この作業を務める括り手は柄が頭の中に入っているというから驚きです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビニールテープなどで括るところが多いのですが、そのテープさえも昔ながらの方法でバナナの茎を一枚一枚割いて作ります。

 

先人達がそうしたように自然の恵みを最大限に活用します。

 

 

 

 

 

 

 

 

気が遠くなりそうな作業を経て完成した カンボジアの伝統の絹絣には得も言われぬ温かみがあります。

 

 

 

 

 

冒頭の写真、森本さんの古布を1年かけて復元した絣織物

職人のプライドが感じられる素晴らしい作品です。

 

2018年8月、私はここで草木染をさせていただきました。

 

使用したのはプロフ(日本でも染料に使われる福木の仲間)。

 

 

染めのマスター、オムライさんが私たちのために約半日!かけて煮出したプロフの染液に漬けます。

 

 

 

 

 

さらに媒染と呼ばれる工程で濃色にしたい部分を染めます。

この媒染液の材料は、鉄、砂糖、ライムといたってシンプル。

村に植えられているライムを毎日足しながら、年中、発酵させています。

温暖なカンボジアの地の利を生かしています。

 

 

 

 

草木染の最大の弱点が色落ちです。

しかし、ここ“伝統の森”で染められた生地は長く色が残るそうです。

「自然の染料は急いで染めると急いで落ちる。だが、ゆっくり染めた色はゆっくりとしか落ちてゆかない。先人たちが何千年にも及ぶ自然との付き合いの中で培われた、豊富な知恵や経験によって生み出される染めの世界。これを私はスーパーナチュラルと呼ぶ。」と、森本さんは語られています。

自然への畏敬の念と徹底したこだわりへの自負が感じられる言葉です。

見渡す限りの大自然、それぞれの持ち場で作業にいそしむ人々、傍らには子供たち、のんびりと過ごす牛、走り回る鶏とヒヨコ達、じゃれ合う猫、”伝統の森”はピースフルな空気に包まれていました。

 

 

 

 

IKTT、“伝統の森”を設立され、現代に伝説の絹絣を蘇らせた森本さんは2017年7月、多くの人に惜しまれつつ68歳の尊い一生を終えられました。

晩年、IKTTの将来について、必要以上の心配はしていないと語っています。

彼らは森本さんの精神、美学を受け継ぎ、それぞれが自身の役目を考え、担っています。

「伝統は守るものではなく、創るものなのだ」と森本さんが言われたように、彼女たちは日々の生活の連続の中で、時代の変化に柔軟に対応変化していくのでしょう。

カンボジアの辺縁の地で究極のピュアなモノづくりに出会いました。

 

 

 

Maya by
兵庫県生まれ  京都の短大で染織を学び、アパレルメーカーの企画、テキスタイルデザインに携わる。着る人がハッピー、作る人も地球もハッピーな服作りをコンセプトに活動中。
Comments (2)
  1. 久次米 紀子 より:

    手仕事や伝統が消えゆく今とても重要な継承だと思いました。
    モノを通して人の温もりが伝わるってすごく大切な事ですね。
    しかも日本人がカンボジアで継承してたなんて。地球市民に国境はないんですね。誰にでもできる事ではありませんが、思い立った人が行動を起こして継承すれば必ず道は拓けるんだ!と感動しました。

  2. Maya Maya より:

    メッセージありがとうございます!
    地球市民、本当にそうですね。
    森本さんのカンボジア伝統織物を復興するという強い決意と不屈の闘志が無ければ成し得なかったと思いますし、カンボジアの人々への深い愛情、自然への畏敬の念が感じられました。
    彼の行動から多くのことを学びました。

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