前編では「喫茶pirica」に込められた想いについて、お話をお伺いしてきました。お店の由来や食材に対する考え方など、河野さんと交わす普段の会話とはまた違う、より深く、まっすぐとした想いを伺うことが出来ました。
カフェを通して生産者さんとお客さんを繋ぐ、架け橋となる役割を担う河野さん。一粒の種から一皿としてテーブルに運ぶまでの「過程」を大切にされている様子が、インタビュー取材を通して伝わってきました。
後編では、そんな河野さん自身の背景を遡っていきたいと思います。
20代前半で上京し、三鷹のレストランやカフェで料理を作り続けていたという河野さん。
2013年に地元である大分に戻った背景には、生まれ育った大分県、そこに暮らす人々に恩返しをしたい…という想いがあるそう。東京という外の街に出たタイミングで、客観的に地元をみることで、改めて大分県の良さに気づき、より愛着を感じたといいます。
東京では、今でも連絡を取り合うような深い出会いがあったり、美術館、ライブ、舞台などに積極的に足を運び、様々な価値観に触れていたといいます。そういった1つひとつの経験によって、目指していきたいものが明確になっていき、今の河野さんの考え方、そしてお店のスタイルに辿り着いたといいます。
今までお世話になった人たちに、わざわざ来てもらえるようなお店にしたいーー
河野さんのどこまでも穏やかで、優しさ溢れる人柄を目掛けて「喫茶pirica」を訪れるお客さんは、すでに沢山いるのだろうと、お話を伺いながら思いました。
取材を進めていくうちに、話題は「食材選び」へ。喫茶piricaでは、大分県で作られたお米や野菜、調味料など厳選した、こだわりの食材が使用されています。
知り合いが関わっているもの、そして消費する場所から出来るだけ近いもの選ぶようにしているといいます。
また、スパイスや茶葉など国内で手に入れることが難しい食材を選ぶ際には「異なる文化、要素を取り入れる」ということを意識しているといいます。
河野さん:
「異文化を取り入れることは、インスピレーションに繋がるような気がします。国外のものを選ぶ時には、会ったこともない生産者さんとつながる感じがして楽しいです。
素材のおいしさも大切ですが、それと同じくらい『作られている過程』にも注目しています。買い物は大きな投票にもなるので、自分なりの基準としては、今後もその商品が続いていってほしいかということを常に意識しています。その上で、生産者さんの考え方や食材が手に届くまでの背景を知って、応援の気持ちを込めて食材を選んでいます」
河野さんのお話の中でキーワードとなったのは、食材の「流れ」。
河野さん:
「食材そのものが持つエネルギーってありますよね。それは、育てられ方や人の手によって変化していくと思うんです。太陽・雨・大地・微生物などのはたらき、そして生産者さんの手によって食材が作られ、収穫・梱包を通してお店まで運ばれる。食材を調理して、お皿に乗せ、お客様へ届ける。それがお客さまの身体に宿って、生きるエネルギーとなる。目に見えない要素だけど、その一連の流れに滞りや不自然な部分が無いように、大地からの自然な流れを大切にするよう意識しています」
今回は前編・後編にわたり「喫茶pirica」オーナーの河野さんにお話をお伺いしました。
見えない部分や感覚を、形として表現すること。
私自身、執筆を通して、その難しさと楽しさを追求する日々を送っていることもあり、今回の取材では沢山の学びがありました。
空間づくりや食材の流れを、研ぎ澄まされた「感覚」でカタチにしていく河野さんのお話は、とても貴重で学びの大きいものでした。
ぜひ皆さまも大分・別府を訪れる際は、喫茶piricaへ足を運んでみてくださいね。
喫茶pirica
Instagram: https://www.instagram.com/pirica_kissa/
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