7月のはじめ、兵庫県・宍粟市にある小さなまち波賀町という地域を訪れました。
宍粟市は、県内ではじめて森林セラピー基地に認定されるほど自然豊かな地域です。四季折々の美しい風景、代々受け継がれる歴史や地域住民によって大切に守られている神社が数多くあるといいます。
1泊2日、はじめての訪問にもかかわらず、宍粟市・波賀町に魅了されました。
訪れたことのない街へ、ふらっと旅にいくーー
事前に調べたり、プランを立てたりせずに迎えた今回の旅をご紹介させていただきます。
兵庫県・神戸三ノ宮から、高速バスに乗って1時間半ほど。バス停に到着すると、今回の取材訪問の担当の方であり、波賀町の街づくりをされている田中さんと対面しました。
宍粟市は、兵庫県内で2番目に広い面積をもつといいます。山﨑、一宮、千種、波賀という4つのエリアに分かれており、今回はその中でも「波賀」という地域を訪れました。
町に関するお話を伺いながら、夕食の食材を買いにいったり、地元の温泉施設を紹介していただきました。
今回お伺いした温泉施設は「フォレストステーション 波賀」。道中は、森林に囲まれて清々しく、空気が澄んでいました。
到着すると、受付スタッフの方が温かく迎えてくださりました。初めての町に少しドキドキしていましたが、地元の方の温かな挨拶とやさしさに、心が和らいでいきました。
温泉は、静かでゆったりとしており、露天風呂もある温泉で癒されました。
帰り道には、野うさぎや鹿に遭遇しました。
「ここでは、動物たちの世界に人間たちが住まわせてもらっているような感覚がするんだよなあ……」
田中さんのそんな一言が、とても印象的でした。それほど、自然と動物、そして人々が「共生する」ことへの意識が大きい地域なのかなと思いました。
宍粟市の特徴の1つに、発酵文化があります。奈良時代に編簒された『播磨国風土記』にも記述が残っているといい、日本酒発祥の地と呼ばれているそうです。
市内には3つの酒蔵(山陽盃、老松、本家門前屋)があり、豊かな清流や自然を活かした宍粟市の酒づくりは、まちづくりの一環として、現代でも形をかえて受け継がれています。
夕食をいただきながら、波賀町についてお話を伺いました。お話の中で田中さんとも意気投合し、波賀町とFLAT.との共創プロジェクトがはじまることになりました。そちらも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
今回滞在させていただいた古民家は、広々としたスペースで、たっぷりの日差しが窓から差し込んでいました。天井や壁、部屋の造りなど、昔ならではの建築様式に魅了されました。お庭には、手作りのピザ窯もあるそう。
そんな素敵な古民家ですが、最初に来たときから綺麗に住める状態だったわけではないと田中さんは言います。
壁紙を貼り替えたり、机をつくったりーー
仲間たちと協力して快適な家造りをしている最中だといいます。
「住めないから、住まない」ではなく、住むためにはどうしたらいいか、何が必要なのかを考えつづけることで、より愛着が湧いていくのではないかと取材を通して思いました。
都会や大きな街で暮らしていると、気付かないうちに忘れてしまう感覚。
ものが無くなったとき、足りないとき、都会や街で暮らしていると無意識のうちに「ない=買う」という思考になっているように思います。
都会から少し離れてみると、ものが少なく、商店やスーパーの数が限られているからこそ、何かが必要なときは「人に借りる」「他のもので代用する」という考え方が浸透しているように思いました。
「ものがない」という状況に対して一度見直し「違うもので代用してみよう」「意外となくても大丈夫かも」というように、ものの必要性を改めて見つめ直すきっかけにもなります。
購買によって「当たり前に手に入る」ことに慣れていると「ない」状態にマイナスを感じ、不安や焦りが生じてしまいます。日頃から「ものがない」状態に慣れていることで、よく考え、知恵を使い、買う以外の方法を見いだすことができます。そこに、楽しさや幸福感も付随して生じていくのではないでしょうか。
1人で解決できないときは、近所の方々や周りの知人を頼ってみる。そうすることで、会話が生まれ、交流する機会にもつながります。
困っているときに、手を差し伸べたくなるーー
「助け合いの循環」が生まれていることを波賀町での滞在を通して気づくことができました。
後編へ