スリランカで染め工房とソーイングセンターを運営し、想いを込めたお洋服を作られている藤原響子さん。
前回に引き続き、藤原さんのインタビューをお届けします!
インタビュー前編はこちらからご覧ください。
−ソーイングセンターでは5人のお母さんが働いています。
お洋服を一人で1着縫うっていうスタイルが素敵だなって。
藤原さん:
着る人への想いが込められますよね。ずっと襟だけ作っていたら、着る人のことを考えにくいですよね。うちのように小さな工房では効率を求めたシステムには出来ないですし、小ささを生かして、分業ではなく1人で1着を仕立てるように縫っています。検品、アイロンまで全て一人でして、担当スタッフが最終チェックをします。
−彼女達のやりがいにもつながりますよね。
工房が彼女達の村にあるから、家族との距離も近いですね。
藤原さん:
スクールバスがうちの前に止まって、子供達が学校から工房へ帰ってきます。私にとって毎回心が和むシーンです。近くで遊んでくれてると、お母さんも安心ですよね。
−旦那さんや家族のことも気にかけて聞いてらっしゃいましたね。
藤原さん:
家庭の問題はどこでもあります。だからこそ仕事に来たら楽しいくてやりがいを感じて欲しいんです。たとえ家庭内で悩みがあっても、母親にとって一番気がかりなことは子育て。うちでの収入の多くは子供の教育などへ繋がっています。
−藤原さんはスリランカにいる皆に仕事を渡していく、工房を続かせていくっていう熱量が本当に大きいですよね。 それをひしひしと感じている彼女達がKYOKO sanにこたえるって思いで一生懸命働いています。
藤原さん:
私の中で一番大切なのは、みんながこの仕事をしてて幸せかどうかです。 みんなの笑顔をキープすることに責任を感じています。
ビジネスとしてはまだまだ道を模索中で安定していませんが、だからこそ私自身の幸せとモチベーションはみんなの生き生きした笑顔。
それが新たな企画、素材探し、販売など、日本での仕事のエネルギー源となっています。
支え助けてくれた方々の想いも背負い経営を軌道に乗せて、工房を未来に向けて形作っていきたい。その為にも着心地や生地素材、デザインにも心を込め、品質と技術力を上げ、お客様に喜んでもらえる服作りをしたいですね。継続可能な工房へとこれからも心血を注いでいくつもりです。
−ソーイングセンターで、皆がハギレを何かできないかって試行錯誤しながらいろいろ作ってましたね。
藤原さん:
布は日本で私が選んだリネンやオーガニックコットンです。思い入れのある布を染めて仕立てる。販売したらそれで終わりという気持ちにはとうていなれません。
種から生まれた天然繊維でつくる服。長い工程に多くの人が関わっています。
少しも無駄に出来ません。 服として着れなくなっても捨てないで、布そのものが大事だから、最後まで何かに使って欲しいです。
−藤原さんが目指すお洋服について教えて頂けますか?
藤原さん:
一枚の服の価値を高めたいと思っています。一枚の服をもっと大切に選ぶ。 買いたい欲求を満たすために、安い服を選びクロゼットの中をいっぱいにしない。
そして自分を表現するに値するものとして、お洋服を選ぶ基準が、デザイン、素材に加えて、服が生まれた背景にまで広がるといいですね。
服は制作過程で多くの負荷を地球にかけてしまうものです。
着る人の心が満たされ、内面の美しさに気付けるような服を生み出したいと思っています。30代から70代の方にも似合う服を作り、長く着れることを大切にしたいです。
お客さんの手元に渡ってからも、私たちはお洋服のことがとても気になってしまいます。擦り切れるほど着てくださっているお客さんがいると、思わず涙が滲んでしまいますね。
染め直しも積極的におすすめしています。色が変化する楽しみが味わえること、染め重ねて新たな命を吹き込めることも、植物染めの素晴らしさです。
−プンチラマイのスタートから10年の今年、オリジナルブランド”Lailha”(ライラ)を世に送り出されました。キッカケを教えてください。
藤原さん:
今まで商品自体にブランドネームを付けたことがなかったんですよ。プンチラマイはもともとプロジェクト名であり工房名なんです。
確かな感触をつかむまで、ブランドをリリースするのは時期尚早だと思っていました。でも、 プンチラマイを始めて10年、紆余曲折がありながら何とか続いてきたのは奇跡じゃないか、財産じゃないか、もしかしたら喜んでくださる方もいるかもしれないと、思うようになりました。私は服を作ることが好きなんだと、気が付いたんです。
そして何より、ソーイングセンターも染め工房もスタッフがこれまでで一番ベストな状態です。というもの、2年前には大きな挫折もあり、現地リーダーを変えてリトライしました。その時にもっと悪化していたら今はありません。
そんな理由で、今年、自社ブランドとして想いを込めた服を、背筋を伸ばして販売していこうと思えたのではないかと。
藤原さん :
響きがとても美しいなと耳に残りました。調べたら天使の名前でした。驚いたのは「魂の助産師」という役割を持っている天使だったんです。
−小さな子供たちっていう意味の”プンチラマイ”とも繋がっていますね!
ライラのコンセプトを聞かせてください。
藤原さん:
「いつも、あなたを包む」が、コンセプトです。植物で染めたエネルギーに溢れる天然素材の布、想いのこもった手づくりの服。
ライラの服を着ることで、自分を好きになったり前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいです。そして作った人のことを思い浮かべてもらえれば、いうことはありませんね。
−実際、彼女達に会えるプライベートツアーも企画されていますね。
藤原さん:
はい。うちの服を買ってくださったことがきっかけで、スリランカに行ってみたくなったというお声を聞くと、とても嬉しいですね。
私のお洋服を購入されてからも、お客さまとの関係に続きがあって欲しいと願っています。
その一つとして実際に作った人たちに会えること。ミシンを踏んだ彼女たちの手が愛情に溢れた母の手であることを、その目で見てもらいたいです。
そしてこの美しい島の魅力に触れてほしい。
そんな思いでオリジナルツアーを不定期に開催しています。
工房でのスタッフとの交流、世界遺産の街やスリランカを代表する建築家の足跡を訪ね、アーユルヴェーダなど、この島の美しさを心に刻んでもらえるツアーです。
■Serendip Tours
instagram : serendiptours
HP : https://serendiptours.tumblr.com/
料理家の太田夏来さんと2人でアテンドします。
ツアー中に彼女とともにスリランカ料理を楽しみ学ぶワークショップも好評なんですよ。
作っている人と着る人が互いに目を合わせその存在を感じあうことが、これから服のひとつの価値になるのではと思います。
−会いに行ける服。なかなか無いですよね。
眼には見えない作り手の想いが服には必ずあるから、皆に感じて欲しいです。
藤原さん:
”Lailha”(ライラ) のお洋服がスリランカとの縁を繋いでくれたら、これほど嬉しいことはありません。いちまいの服の向こうにある世界に繋がってもらえたら。
そこから紡がれていく物語が、一人一人にありますように。まずはスリランカに来てくださいってことが一番です!
私もスタッフもいつもウェルカムです。
みんなの笑顔に会いにきてくださいね!
今年4月、スリランカでは同時多発テロが起こり、世界中に衝撃が走りました。
藤原さんはとても強い悲しみに包まれたそうです。しかし、一歩も引くことなく、テロから1ヶ月後にはスリランカに渡られ、仕事を再開されました。
半年が過ぎた今、現地は平穏を取り戻し、観光客も徐々に戻りつつあります。
私も昨年訪れましたが、また必ず行きたくなる魅力的な国です。
南国の豊かな自然の恵みをいただいて染められる布、その自然に包まれて暮らす人々が丁寧に作ったお洋服。皆さんも、ぜひ手にとって見て頂きたいです。できることなら彼女達が待つスリランカで…
■Punchi Lamai (工房の様子やイベント情報)
instagram : punchilamai
HP : www.punchi.jp
■Lailha
instagram : lailha_clothing
HP : www.lailha.com