【インタビュー】 愛してやまない国で愛する女性達と作るいちまいの服-前編

 

世界中の旅行者に愛されるガイドブック”ロンリープラネット”が選んだ「2019年行くべき国」No.1に輝いた国はどこか皆さんご存知ですか?

それは、、、、

 

 

スリランカです! 

シンハラ語(スリランカの公用語)で光り輝く島という意味だそう。
名実共に”輝く国”で2009年からスリランカの女性達と、ものづくりをされている藤原響子さんの工房へ、昨年2018年9月に訪れました。工房で働く女性達と触れ合い、染めのお手伝いをして、貴重な経験をさせていただきました。

 

今年2019年4月には痛ましいテロも起きましたが、藤原さんの元で働くスリランカの女性達は今日も元気。 藤原さんの波乱万丈の歩み、プンチラマイの10年、10年目の新たな挑戦”Lailha”(ライラ)についてお伺いしまいた。

スリランカに魅了された

−藤原さんの活動をFLAT.でご紹介させて頂けることがとても嬉しいです。 早速ですがスリランカに出会ったキッカケを教えて頂けますか?

藤原さん:


20年前、
スリランカ人に薦められて行きました。当時は内戦中で旅行には不向きな国でしたが、休戦中のタイミングで滞在しました。人々の暮らし、豊かな島の姿に、私は一瞬で心を奪われてしまいました。今、世界中の人々がスリランカを愛し繰り返し訪れていますが、当然だなぁって思います。

昔から欧米よりアジアの魅力に惹かれていました。
若い頃にフォーカスしていたのはアジアの子供達や女性の地位でした。その延長線上に、いつか女性たちの仕事を作ることを自分のミッション、ライフワークにしたいなと考えていたのだと思います。

そして転機が訪れたのが2009年、長い内戦が終結した年でした。 私もちょうど仕事を辞め、息子も5歳になり、タイミングという意味ではベストで、込み上げてくる気持ちを抑えられませんでした。

計画が無くてもスタートしたっていい

藤原さん:


しかし、仕事を辞めたばかりで無給状態の一番しんどい時に始めてしまいました(笑)  何の計画もありません。直感で動いて、自分の心に従った感じです。 成功を夢見たり、失敗を心配したりということは、全くありませんでした。

−直感でスタートされたっていうのが、良かったんですね。

藤原さん:

そう、私の場合はですが、電卓をはじかず、事業計画も立てなくて良かったと思います。スタイルとしては終始一貫して、子育てのようにじっくりと等身大のサイズでやっています。ほんの少しの背伸びだけ。 困難もあり結果がすぐには出ない中で情熱が続くかどうか。 結婚と同じで始めるのは簡単です(笑)問題はどう継続するのか、ということです。 やっと、工房の状態がビジネスとしてスタートできるかなと思える所まで成長したので、今は苦手な計算ばかりしています(笑)

村のお母さん達とできること

−2009年、プンチラマイ(シンハラ語で”小さな子どもたち”)としてスリランカでものづくりをスタートされたんですね。

藤原さん:


本当に手探りでした。
お母さんたちが子育てのサイクルの中で村の中でできることがとても重要で、女性達がやりやすいのは針仕事でした。当時、工房は作らず、バッグや小物作りなど、スリランカの女性生産者達に家で出来ることをお願いしていました。

 

−スリランカでは試行錯誤されながら物作りを進められる一方で、2012年には大阪にフェアトレードショップをオープンされたんですね。

藤原さん:

ショップとして、エシカルな製品の普及にも力を注ぎました。 いつか、自分達で作ったものもそのお店で販売したいと考えていました。

そして、2014年、当時はまだ間借りでしたが、縫製工房がスタートしました。

日本人ボランティアさんが現地で青空縫製教室をしてくれたことが、服作りの一歩となりました。まず、選抜チームを作り、生徒として洋裁の基礎レッスンからはじめました。現在の自社工房の原型がまさに誕生した瞬間です。

藤原さん、草木染めの伝道師になる!?

−さらに草木染めもスタートされました。

藤原さん:

はい、すぐに素材の問題に突き当たりました。スリランカで生地屋を巡りましたが、良いものがなくて。それなら、スリランカを愛している私が、愛している人達と物を作るんだから、現地のものを使って草木染めをしようって思ったんです。

幸運にも草木染めの工房が同じ地域にあったので、オーダーしようと思って行きましたが、当時全くもって日本で通用するレベルではなかった。その状況を見た私はまた気持ちだけで動いてしまい、気がついたら自分で草木染めを教えていました(笑)

当初はたくさんの失敗と多くの生地のロス、そして涙も出ました(笑)1日中みんなと汗をかき、染色作業をして、信頼関係も作り上げていきました。幾度も失敗を繰り返して学ぶうちに、彼女達は職人として腕を上げていきました。2年前、工房が閉鎖になると聞き、運営を私が引き継ぐことになったのです。

−苦労をされて草木染めを軌道に乗せられたのですね。

“AYUR COLOR”(アーユルカラー)と名付けられていますね。

藤原さん:

はい、スリランカといえばアーユルヴェーダが有名ですよね。人々の痛みを癒す植物や生薬やスパイスが豊富で、そこから生まれる色はスリランカの島のエネルギーに溢れています。スリランカの自然から生まれた色、植物をまとうような気持ちになれるお洋服になっていると思います。


染めの材料となる植物は、アーユルヴェーダの薬局で買っています。本来はオイルで煮出し薬効を抽出して使用する植物です。


染め工房では朝一番にその日に染める分の染料(木の実、根や皮など)から薬効と色をしっかり煮出します。染められるのは、1日にたった2着分だけ。つまり年に約500着分位しか染められません。
草木染めは手染めをする職人、火と水、植物と鉱物の調和から生まれます。乾いた後、色味の調整でさらにもう1日かけて染め重ねることもあります。

※アーユルヴェーダは
5000年の歴史を持つ伝統医療。インドから仏教とともにスリランカへ伝わり、独自の発展を遂げた。

−新しい植物にも挑戦されていますね。

藤原さん:

新しいハーブを使って、
いろいろ試しています。色彩もそうですが、薬効という認識で染めを深めていきたいと思っています。堅牢度を高める事も大切な課題です。


※堅牢度・・・日光、洗濯、摩擦などによる生地の色落ちの度合いを測る基準。

 

後編では、藤原さんのお洋服への想い、新ブランド“Lailha”(ライラ)のことなどを伺います。お楽しみに!

 

投稿者プロフィール

Maya
Maya
兵庫県生まれ 
京都の短大で染織を学び、アパレルメーカーの企画、テキスタイルデザインに携わる。着る人がハッピー、作る人も地球もハッピーな服作りをコンセプトに活動中。

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